<挫折のボルドー編> ピンチを救ってくれたシャトーたち①シャトー ムーラン オーラロック

1994年にワインの直輸入を始め、「無名産地でも美味しいワインを。」と、南フランス・ラングドック地方のワインを、おそらく日本で一番最初に輸入したことは、ご存知の方が多いのではないかと思います。

しかしこの頃から、すでにヴィノスやまざきは、ボルドーワインの輸入を行っていました。

 

フランス・ボルドー地方は世界に名だたるワインを産出する有名ワイン産地。
歴史の中でワインの「格付け」も行われました。
中央に流れる川を挟んで「左岸」「右岸」のエリアに分けられ、
左岸のメドック地区ではシャトー マルゴー、シャトー ラトゥール、シャトー ラフィット ロートシルト、シャトー ムートン ロートシルト等のカベルネソーヴィニヨンを主体としたワインが、そして右岸のポムロール地区ではシャトー ペトリウス等が、サンテミリオン地区ではシャトー オーゾンヌ等メルローというぶどう品種を主体とした赤ワインが、世界的なブランドワインと言われています。

そんな時に、グランヴァンが造られる有名産地ではなく、ボルドーの中でも無名産地のワインを探そうと、現地のグルメ雑誌で「コート」という名の付く地区だけのワインを集めた記事に掲載された造り手を訪ね、その記事の中で一位となったワインを日本に初輸入することに成功しました。

その造り手は華がある青年。
日本で来日パーティーを行ったところ、お客様から大変ご好評いただき、一躍人気ワインになりました。

そして、約20年前にヴィノスやまざきが東京初出店した時には、
「東京だから、有名ワインを売らなくては」
と、有名になったそのワインのロゴが焼き印されたボードを店内の壁にするという、"カッコいい”店を造ったのです。

が、そのワインの価格は、人気と共に上昇。
やっとお客様に支持して頂けるようになった頃に、今は価格をあげないでほしいとお願いしましたが、ヴィノス側との意見の相違が…。
最終的に、このワインは他社のインポーターのところにいってしまったのです。

深夜に、店内の壁をすべて変えるという作業をしたことは、今でも忘れられません。
店内には、ボルドーのワインに貢献した人に贈られる「ジュラード サンテミリオン サンテミリオンの騎士」の写真も大きく張ってあったのですが、ボルドーという有名産地はもう、いいそんな気持ちで、店頭は勿論、ホームページからもその写真を削除してしまいました。

このワインは、エージェント(代理店)を通じて輸入していました。
仲買人の人やエージェントと呼ばれる人達は、日本の多くのインポーターを相手に仕事をしていますので、ビジネスという視点で見れば、高く買ってくれるほうに売る、というのは、当然だったのかもしれません。
ですが、当時は「もうワインなんかやめたい。特にボルドーは…」と挫折してしまったのです。

 

そんな時に、そんなヴィノスやまざきを助けてくれたのが、仲買人やエージェントを通さず、直接飲んで下さる方に売ってほしい、と、自分達でワインを造り、自分達でパートナーに売っている、小さな農家のシャトーたちだったのです。

 

その一人が、フロンサックという、ボルドーの中でもあまり聞いたことのない小さな村で、村のワインの品質向上の為に全力で頑張っていた、ジャン・ノエル・エルベ氏。

そうです、今でも人気のシャトー ムーラン オーラロックの当時の当主です!

ポムロールやサンテミリオンにも近い土壌で、メルローをすべて手作業で栽培、収穫し、選果もすべて自らの手で行っていました。

エルベさんの手は、真っ黒で、シャトーの当主いうよりは、ぶどう栽培農家のおじさん、というイメージでした。

醸造所も自宅の裏。
ポンプも使用せずタンクに運び発酵。

現在、ほとんどのワインの発酵はコンピューターで温度管理されていますが、エルベさんは寝袋を醸造所に持ち込み、発酵の音を聞きながら、醸造を行うというワインクレージー。

グランヴァンに負けない素晴らしい樽を自らが選び、その中で熟成。
出来上がったワインは、濃厚で、しかも複雑な味わい、シルキーで滑らか、もうグランヴァンとしか言いようがない味わいでした。

その後、シャトー ムーラン オーラロックは有名なワイン雑誌で、50万円もするシャトー ペトリウスと同点という高評価を獲得。
でも、エルベさんは、絶対にそのことをアピールしませんでした。
また、有名ワインジャーナリストが訪ねてきても、取材拒否するという頑固者。

その想いをきくと
「ワインは投資ではなく、飲んで下さる方の為にあるから、価格をあげたくない。高い点数がつくと売る人達が価格をあげたくなる。」


通常、ボルドーワインは熟成して年代物になると、新酒の時の10倍くらいにまでなってしまいます。
でも、シャトー ムーラン オーラロックを私達が初めて訪問した時、エルベさんは、
「貴方たちのような人が来るのを待っていた。」
と、自宅の奥のセラーから、どこにも売らずに熟成していたワインを出してくれたのです。

その後エルベ氏は、ヴィノスやまざきの先代の山崎巽とも親交を深め、小さな無名の静岡の酒を育てた山崎巽を大変尊敬し、家族ぐるみのお付き合いが始まりました。

今では、息子のトーマが当主となり、ヴィノスやまざきの4代目たちと親交を深めています。

今年は蔵直30周年を祝って、シャトームーランオーラロックから特別な年代物をお分け頂いたり、ムーランのお友達のボルドーの家族経営の小さなシャトーから、希少な年代物を譲って頂けるお願いをしているところです。

 シャトー・ムーラン・オーラロック 2014|ヴィノスやまざき|ワイン通販 (v-yamazaki.co.jp)

シャトー・ムーラン・オーラロック 2011|ヴィノスやまざき|ワイン通販 (v-yamazaki.co.jp)

ボルドーに挫折して、一度は削除した「サンテミリオンの騎士」の写真。
ヴィノスの歴史の中にまた復活させよう。
そんなボルドーワインを飲みながら考えています。

 

ヴィノスやまざき
ファウンダー
種本祐子

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