<ボルドー編>ピンチを救ってくれたシャトーたち②シャトー レグラーブ

「ボルドーの有名産地ではなく、無名でも美味しいワインをお届けしたい…」

そんな想いで、ボルドーの無名産地の美味しいワインを探し、フランスのグルメ雑誌で「コート」と名の付く地域のワインの中から一位になったワインの輸入に成功しました。

が、考え方の違いで他のインポーターに代理権が移ってしまい、挫折しました。
詳しくは<挫折のボルドー編> ピンチを救ってくれたシャトーたち①シャトー ムーラン オーラロック

そんなヴィノスやまざきを助けてくれたのが、仲買人やエージェントを通さず、直接飲んで下さる方に売ってほしい、と、自分達でワインを造り、自分達でパートナーに売っている、小さな農家のシャトーたちでした。

そんなシャトーのひとつが、この雑誌の「コートのワイン特集」で2位になったシャトー・レグラーブ。

 

1位だったワインの生産者は、とにかく華やかな造り手。
しかし、2位のシャトー・レグラーブは真逆。
本当に地味で、シャトーというより農家というイメージです。

試飲も、畑の中にある小さな小屋で行います。
味わいは、確かにバランスが取れていて、素晴らしい味だとは思うものの、押し寄せてくる強さはあまり感じられず、オーナーのボビュフさんのように、「大人しい」というイメージを持ちました。

 

ですので、輸入してすぐに大ヒットというわけではなかったのですが、じわじわと、少しずつ売れるようになっていきました。

ボルドーのシャトーワインとしては手頃な価格なので、それで売れているのだろう、と思い、特に生産者の来日イベントも行うこともなく、広告に登場させることもありませんでしたが、シャトー レグラーブは「常にそこにいる」そんな存在でした。

 

ところが、これがとんでもないダークホースだったのです。

年々、年々、少しずつ、少しずつ、品質があがっている。
それなのに、主張することなく、価格は為替の変動位の変化しかない。
ボルドーのグランヴァンは、この数年で10倍以上の価格になったワインも多いのに…
 

何か凄いことをしたという訳ではなく、
オーナーのジャン ピエール ポヴィフさん一家が、愚直にぶどう栽培に全力を注ぐ。
そして、天候が悪い年には、徹底的にぶどうの選定作業を行い、完熟した葡萄だけでワインを造る。
これが秘訣でした。

ポヴィフさん曰く、それは農業としては当たり前だそうですが、時には収穫量が1/3になってしまうこともあるそうなのです。

ボルドーというと、華やかなシャトーをイメージしますが、彼らの生活は質素そのもの。
ワイン造りは、代々畑とお客様を守るもの、という考えのもと、家族総出で、農業に取り組んでいるのです。

 

ボルドーというと、赤ワインのイメージが強いのですが、彼らの造る白やロゼは本当に素晴らしく、すっきりとした酸がありながら完熟葡萄からくる果実味がバランス良く、とにかく「美味しい」…

そして、赤ワインも樽を使っていないものは、柔らかく、主張をせず、ひたすら控え目で、柔らかい。
赤の樽熟成のワインは、これはもう、その辺の5000円位するボルドーワインにひけをとらないくらい、まろやかでシルキー。

どのワインも主張せず、舞台や映画でいうと、主役を引き立てくれる名脇役のような存在です。

 

(左から)
シャトー・レ・グラーヴ 白
シャトー・レ・グラーヴ・ロゼ
シャトー・レ・グラーヴ 赤

そうだ。ワインって、点数や順位ではなく、料理をひきたてる脇役だったのではないか、その証拠に、なんの宣伝も営業もしていないのに、このワインをオンメニューしてくれている有名飲食店様の多いこと。

先日も、有名な中華レストランに行ったら、何と、シャトーレグラーブのロゼが一番のおすすめとしてメニューに掲載されていました。

 

有名でなくても、と、言いながら、私自身がワインを有名にしようという気持ちがあったのではないのだとうか。
話題の一位のワインを取りにいったのではないのだろうか。
自分自身と向き合い、地味でも高品質のワインを造り続ける農家の方々が実は、お客様の生活や、私達のお店を支えてくれているんだ、ということに気が付いたのです。

 
ワインというものは、脇役。
そして、ワインを生業とする小売業である我々もお客様生活や食卓を豊かにする脇役。
それも、ずっとずっと世代を超えて寄り添っていく。
それこそが、真の商売。

それを教えてくれたのが、シャトー・レグラーブなのです。

 

無理を承知で、レグラーブの葡萄でクレマン(スパークリングワイン)を造ってほしいとお願いしたら、何年もかけて造ってくれた、そんな真面目で信頼のおける農家の家族永遠の名脇役、それが、シャトーレグラーブなのです。

シャトー・レ・グラーヴ クレマン・ド・ボルドー キュヴェ・ポヴィフ

 

この数年で、この蔵の当主は息子のジュリアンに代わりました。が、誰が当主でも、この家族は変わらず、愚直に良い葡萄を造り続けています。

私も、そんな名脇役になれるよう歳をとっていきたい、ヴィノスやまざきもそんなファミリー企業でありたい、そんなことを思いながら、今夜はシャトーレグラーブのロゼを開けたいと思います。
サンテ!

ヴィノスやまざき
ファウンダー
種本祐子

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