<ボルドー編> グランヴァンを農協で造りたい…ユニメドック(グランダール・サンジャン)

フランス・ボルドー地方は世界に名だたるワインの生産地。
特にメドック地区は、カベルネソーヴィニヨンを主体としたしっかりとした赤ワインを造っており、1855年の第一回パリ万博でボルドーワインの格付けが行われ、その名は世界レベルのブランドとなりました。

メドック地区から約60の赤ワインが1級から5級まで評価され、1級はシャトーマルゴー、シャトーラフィットロートシルト、シャトーラトゥール、シャトーオーブリオン、そしてシャトームートンロートシルトと、ワインファンの垂涎のワインたちです。

 

そんな中で、
「ボルドーの1級シャトー並みの味わいの赤ワインを手頃な価格で販売したい。」
という想いが、バーメドックの農協のバッシェさんとの出会いで実現できることになったのです。

1995年にボルドーの有名産地であるメドックを訪れた際、後学のため世界に名だたる高級格付けシャトーを数件巡りました。
「美味しい!!素晴らしい。でも、高い・・」

案内して下さった高級シャトーの社員の方に、
「皆さんは、毎日どんなワイン飲んでいるの?このシャトーのワイン?」
と聞いたところ、
「わが社のワインは高くて日常的には飲んでいません。
 私が買いにいくのは、農協。
 特にバーメドックの農協のワインは最近品質が向上していると地元で話題になっているのです。」
と、メドックの一番北にあるバー・メドック地区の農協を紹介してくださったのです。

そこで出会ったのが、バッシェさんという醸造を行っている青年。

「ボルドー大学の醸造学部を卒業して、このメドックでグランヴァン(格付けクラスのワイン)を造るのが夢なんだ。同期には格付けシャトーのオーナーの息子も多く、彼らはいつかオーナーになるだろう。彼らに負けないワインを、自分の力で造りたいんだ!」

こう、力強く語るバッシェさんでしたが、彼が農協に就職してまず行ったのが、180軒の農家にワイン造りを止めさせたそうです。

その頃の農協では、農家の造ったワインを販売所で売るのが常でしたが(日本の道の駅みたいな感じ)、バッシェさんは彼らに葡萄栽培の指導を行い、葡萄の品質向上に努めました。
そして品質の高い葡萄は、農協がその質に応じた価格で買い取る、という仕組みを造ったのでした。
180軒の農家は競うように、良い葡萄を造り始めました。

180軒もあると、天候が少しくらい悪くても、悪天候の害を受けない地区もありますので、毎年安定して品質の良い葡萄が造られます。
そして、その葡萄でバッシェさんが、全力で良いワインを醸造することができるのです。

 

そうして造られたのが、グランダール・サンジャン。 
このワインを「ユニメドック」とか「ユニメ」などと呼んでいるのは、当初お店に並べた時に、フランス語が読みづらく、「ユニメドックのワイン、ユニメ」と、社内では呼び合っていたからです。
それをPOPに書き、お客様も「ユニメドック」と、覚えて下さいました。

こくがあって、渋みもしっかりとしていながら、しっかりと樽で熟成し、渋みがまろやかに溶け込んでいる。まさに、格付けワインのスタイルです。

年々品質が向上し、また、ヴィノスやまざきのお客様がたくさんお買い上げ下さるお陰で、良い樽も仕入れられるようになりました。

その後、彼が造ったワンランク上のクラス「クレマン・サンジャン」は、某格付けシャトーとブラインド(銘柄を伏せての試飲)ティスティングした際に、誰もが格付けシャトーより高い点数を付けた程の素晴らしいワインに成長したのです。

そんなユニメドックのワインは、ボルドー格付けワインの1/10以下の価格なのですから、本当に良く売れ続けています。

このワインを初めて輸入した時、しばらくたって口コミで聞きつけた有名ホテルの有名ソムリエから直接ご注文のお電話を頂いたことを、昨日のことのように覚えています。

数年前にボルドーを訪問し、バッシェさんとお話した時に、

「農協ワインを造る道を選んだのは正解だった。
 働き始めてまもなく、ヴィノスやまざきと出会い、有名な産地や生産者にとらわれず、本物のワインを探すというヴィノスやまざきの考え方に共鳴し、ともに歩みともに成長してきた。
 今の自分達があるのはヴィノスやまざき、そして農協ワインを応援してくれるお客様のおかげと言っても過言ではない。
 本当に感謝の気持ちしかない。」

という言葉をいただきました。

初めて会ってから約30年、バッシェ青年は立派な匠の醸造家になり、今も私たちにこだわりのワインを届けてくれています。

若かった私達は、それぞれに熟成を重ねてきました。
が、私にとってバッシェさんは匠でありながら、いつまでも、「グランヴァンを農協で造りたい。」と、夢いっぱいに眼を輝かせていた農協の青年なのです。

ファウンダー
種本祐子

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