富士山初冠雪は例年より遅く、少しずつ冬らしさを感じるようになりました。11月はワイン業界最大のイベントボジョレー・ヌーヴォーが21日(木)解禁!日本酒ファンの皆様もぜひ味わってみてはいかがでしょうか。これからどんどん、各蔵元から新酒も出荷されます。新酒からお燗まで楽しい時期の到来です!
今月の「地酒倶楽部 蔵」は、酒どころ「広島:中尾醸造」から広島県産:八反錦を使用し、食中をコンセプトに醸された純米吟醸と旬ともいえる「牡蛎」の佃煮オイル漬けです。どちらも合わせてご賞味ください!
[広島]誠鏡 純米吟醸 八反錦
[おつまみ]渾身の広島牡蠣佃煮 オイル漬け 120g
ストーリー
【中尾醸造】
中尾醸造と竹原の歩み
中尾醸造が生まれた竹原の地は、平安時代に京都・下賀茂神社の荘園として栄えた歴史から、「安芸の小京都」と呼ばれています。製塩地として飛躍的に発展した時代は、地域全体が豊かな経済力を持っていました。国の重要伝統文化財として、今も街並みは昔と変わらずに残されています。
竹原が塩田として栄えたのは、日照時間が長く降雨量が少ない独特の環境のため、他地域よりも塩田が育ちやすい環境にあったからです。この環境は、同時に米の栽培においてもとても良い環境でした。そのため、酒造りが発展したのは自然の成り行きだったといえます。
日照時間、降雨量など酒造りに適した環境と、塩田により潤う地域経済が相まって、大正時代に竹原地域は大きな発展を遂げました。全盛期には26軒の造り酒屋が存在していました。
中尾醸造フラッグシップ「幻」の誕生
純米大吟醸「幻」のルーツは、1940年(昭和15年)に4代目中尾清磨(なかおきよま)が発見したリンゴ酵母に始まります。酵母が日本酒の味と香りに大きく影響を及ぼすことを知った4代目中尾清磨は、1927年(昭和2年)頃から東京帝国大学の発酵学教室で坂口謹一郎先生(後に酒の神様と称された学者)に師事し酵母の研究を始めます。
当時の発酵学教室には、キッコーマンの茂木氏なども在席されていたそうです。
2000種以上の酵母から、最高のものを
様々な場所から採取した酵母の発酵試験を繰り返し、日本酒の発酵に必要な3つの能力(発酵、香り、酸味)について優れている酵母を探し続けました。
自然界において、3つの能力を全て兼ね備えた酵母を見つけ出すことは奇跡とも言えるほど確率が低いことでした。信念と根気が必要な作業です。
清磨は4年後の1930年頃には広島の蔵に戻りますが、帰ってからも酵母の研究に没頭しました。
そして、試験を始めてから14年の年月が経過し、試した酵母の数が2,000種を超えた頃、
ついに抜群の芳香(吟醸香)を放つ酵母に出会います。しかも、それはアルコール発酵力が強く、爽やかな酸を生成するという3拍子が完全に揃った奇跡とも言える酵母との出会いでした。また、さらに当時としては珍しい、発酵で泡の出ない酵母でもありました。
その酵母は、リンゴの果皮から採取されたことから、後にリンゴ酵母と命名されます。
酵母が分離されたリンゴは、清磨が所用で出かけた広島県呉市の街を歩いていたときに、
たまたま八百屋に並べられていた真っ赤なリンゴが目に止まり、買い求めたものでした。
新しい酒母の製造方法が完成
しかし、リンゴ酵母を実際の酒造りに活かすことが出来たのは、それから7年後のことになります。それまでの酒造りの方法では、リンゴ酵母を添加しても発酵の途中で、蔵に元々住み着いている力の強い酵母に取って代わられ、お酒を搾る頃にはリンゴ酵母は消えてなくなってしまうといったことが起こりました。リンゴ酵母の特徴を全く活かせなかったのです。
それを解決するために清磨は、新しい醸造法の開発に着手することになります。
そして、7年後の1947年(昭和22年)に「高温糖化酒母法」という新しい酒母(しゅぼ)の製造方法を完成させました。高温糖化酒母は、日本酒造業界に貢献したことで、開発から8年後の1955年(昭和30年)に日本醸友会より第1回技術功労賞を受賞しました。
3年間連続で皇室新年御用酒を献上
こうして、1948年(昭和23年)にリンゴ酵母を使い高温糖化酒母法で仕込んだ大吟醸酒は、その年に開催された全国鑑評会で1位を受賞するという驚くべき結果を残すことになります。
そして、翌年1949年から3年間連続して、皇室新年御用酒を献上するという栄を賜ります。
また、当時はまだ吟醸酒という概念が存在しなかったことがあります。出品酒は、あまりにコストがかかるお酒なので、値段が法外に高くなることから、いくら美味しくても売れるはずがないと思われていました。そして、当時そんな高級な日本酒は誰も必要としていなかったのです。吟醸酒は品評会のためだけのお酒だったのです。また、たとえ高額で販売したとしても、当時の課税制度(従価税)では、コストに見合うだけの利益を得ることは難しいという大きな問題もありました。
フラッグシップ「幻」の発売
そして、1974年(昭和49年)ついに、いくつもあった難題を乗り越え、採算も度外視して、リンゴ酵母で醸した純米大吟醸酒を「幻」という名前で発売しました。全国1位受賞から26年目のことでした。最初の年は、1800mlに8,000円という破格の価格を付けて100本販売しました。普通の1800mlの日本酒が800円の時代です。それで、どうなったかというと、「そんな高い酒が売れるはずがない」と周囲からバカにされる中、あっという間に完売してしまったのです。
発売翌年の1975年(昭和50年)、「面白い酒を出した奴が居る」と言う噂が広まり、当時の人気TV番組11PMから声がかかりました。
番組には、生放送のスタジオでメインキャストをはじめ、出演の皆さんが幻を「旨い!旨い!」と飲んでくれたのです。
そして、番組終了後に司会の方が声をかけてこられました、「明日の朝、大変なことになってますよ」。その言葉通り、翌日の早朝、宿泊のホテルに興奮した声で社員から電話が入ります。予約の電話が鳴り止まないという報告でした。以来、幻は好評を博し品不足が20年近く続きました。その「幻」は現在も多くの皆様に愛飲され続けています。
【今月のおつまみは】
渾身の広島牡蠣佃煮オイル漬
日本三景「宮島」と対岸の廿日市市に挟まれた海域「大野瀬戸」。牡蠣の養殖が盛んなこの海域は波が穏やかで、西は広島市の太田川、東は山口県の小瀬川に挟まれ、太古から自然保護区として守られた宮島原生林からミネラル豊富な清流が流れ込む海域。干満の差が大きく、潮の流れが早い為、餌となる植物プランクトンが豊富な県内屈指の豊かな海です。この恵まれた海域で育つ牡蠣は風味があり、しっかりと身の締まった濃厚な味わいが特徴です。
牡蠣は一般的には10月頃から水揚げが始まり、5月末頃まで収穫できます。しかし、この期間の中でも牡蠣が最も肉厚で美味しいとされる旬の時期は2月から4月。5月になると牡蠣は卵を持ち始め、食味が落ちると言われています。
「渾身の広島牡蠣佃煮オイル漬」の牡蠣は3月から4月までの旬の時期の選りすぐりの牡蠣のみを使用しています。
「渾身の広島牡蠣佃煮オイル漬」は牡蠣の美味しさを活かすため、くせのないヒマワリ油を使用し、国産の香り良い山椒、旨味たっぷりの北海道産の昆布粉にカツオの削り節。これらの素材がバランスよく合わさった無添加にこだわった逸品です。濃厚な牡蠣、こだわりの素材に和テイストな味付けをした「渾身の広島牡蠣佃煮オイル漬」はしっとりとしたやわらかい食感で濃厚な牡蠣を味わえます。
残ったオイルはパスタや野菜炒めにご利用ください!
商品詳細
日本酒:【誠鏡 純米吟醸 八反錦】
食中酒をコンセプトに、9号系酵母を使用し広島県産の酒造好適米「八反錦」で醸しています。爽快な吟醸香を上品に表現し、すっきりとした口当たりながら熟成により味に幅を持たせ八反錦の特徴を十分に引き出しています。甘味・旨味・酸味、また、ほのかな苦みのバランスが後切れの良い爽やかな飲み心地を生み出しています。
産地:広島県
蔵元:中尾醸造
原材料名:米(国産)、米麹(国産米)
使用米:広島県産:八反錦
精米歩合:麹米・掛米 ALL55%
アルコール分:15.4%
おつまみ:【渾身の広島牡蠣佃煮オイル漬】
産地:広島県
容量:120g